コロンビア大・国際公共政策大学院(SIPA)のカリキュラム紹介

こんにちは。今年の秋からSIPA(コロンビア大学・国際公共政策大学院)での留学生活を始め、授業開始から約2ヶ月が経ちました。

秋も深まり、ニューヨークでは木々の葉が色付き始めましたが、そろそろ年末の出願準備に向けて、各校のコースリサーチをされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

志望校一つ一つを調べていくのはとても手間がかかったので、本稿では、SIPAの学位・カリキュラムの基本的な仕組みについて、簡単にご紹介したいと思います。

1.SIPAの学位について
SIPAの修士学位は下記の6種類があります。これらの学位については、基本的に出願時に決定し、原則としてその後変更することはできません。

リンク先の”Requirements”、”Sample Program”から詳細を見ることができますが、ざっくりとしたイメージを簡単にご紹介します。

(1)Master of International Affairs (MIA)
・国際関係学修士。2年コース。安全保障や開発援助など国際関係に焦点。
(2)Master of Public Administration (MPA)
・行政学修士。2年コース。政策立案の過程など行政運営に焦点。
(3)Program in Economic Policy Management (PEPM)
・経済政策修士。1年コース。MPA/MIAに比して経済学・統計学に焦点。
(4)Executive Master of Public Administration (EMPA)
・社会人向け行政学修士。2年または3年コース。
・平日の夜間や土日を利用し、働きながらMPAを取得するコース。
(5)MPA in Environmental Science and Policy (MPA-ESP)
・行政学修士(環境政策専攻)。1年コース。環境政策に焦点。
(6)MPA in Development Practice (MPA-DP)
・行政学修士(開発経済専攻)。2年コース。開発政策に焦点。

たくさん学位があり、混乱してしまうかもしれませんが、基本的にはMPA/MIAに在籍する学生が多く、在籍する期間が限られている場合や、特に興味関心のある分野が明確な場合はその他の学位を選択するケースが多いようです。

なお、MPA/MIAは特に共通点が多く、主な違いは1年目の必修授業において、
・”Conceptual Foundations of International Politics”を履修するのがMIA、
・”Politics of Policymaking”を履修するのがMPA
という点です。

2.SIPAの専攻について
MPA/MIAを選択した場合、それぞれ下記の中から一つずつ主専攻(Concentration)と副専攻(Specialization)を選択することになります。これらの専攻を選択することで、学位とは別に必修科目が追加されることになるため、カリキュラムの大枠が決まることになります。

出願時は全くイメージが湧かないと思いますが、これらの主専攻と副専攻は入学後に自由に変更することができるため、出願時にはそこまで考え詰める必要はありません。秋学期の初めに、各専攻のオリエンテーションがありますので、そこで決めれば十分です。

Concentration Curricula
Economic and Political Development(EPD)
Energy and Environment(EE)
Human Rights and Humanitarian Policy(HRHP)
International Finance and Economic Policy(IFEP)
International Security Policy(ISP)
Urban and Social Policy(USP)

Specialization Curricula
Advanced Policy and Economic Analysis
Gender and Public Policy
International Conflict Resolution
International Organization & UN Studies
Management
Regional Specializations
Technology, Media, and Communications

3.サンプルプログラム
ここまで、SIPAの学位と専攻を概括してきましたが、具体的な時間割の例をご紹介したいと思います。私は、経済政策や金融政策に興味があるため、
・学位:MPA(行政学修士)
・主専攻:IFEP(国際金融・経済政策)
・副専攻:Management(マネージメント)
の組み合わせを選択しており、1年目の秋学期の時間割は下記の通りとなっております。

9-11
11-13 Advanced Excel English Writing English Writing (Accounting)
14-16 Decision Models Accounting Accounting
16-18 Internationl Finance (Decision Models) Policymaking (International Finance)
18-20 Policymaking

()書きのコマはRecitaionと言って、TAの2年生による補修の時間なので、必ずしも毎回出席する必要はありません。理解が不十分な場合に、選択的に出席しています。

月・火・木に集中的に授業を入れたので、水・金は課題をこなしたり、自習の時間にあてています。単位数の制限などから、1学期に受講する授業は4〜6個となるのが平均的です。

通常、1年目の秋学期は、ほぼ全ての学位で必修となっている①Quantitative(統計学)、②マクロ経済学、③ミクロ経済学を受講する必要があるのですが、Proficiency Examsを受けることによって履修をスキップすることができ、このような自由度の高い時間割を組むこともできます。

(1) Politics of Policymaking: Comparative Perspectives (Christopher Sabatini 教授)
政策立案の政治学。MPAの必修科目であり、MPAの1年生のほぼ全員が受講する授業です。1週間に2コマあり、1つは基本的な知識を確認する全体講義、もう1つは15〜20人程度のグループにわかれて行うディスカッションの講義です。

この講義では、政策立案の枠組みを
(1)政策課題の設定 (Problem Setting)
(2)利害関係者の分析 (Stakeholder Analysis)
(3)実施過程 (Implementation)
の3段階に分解し、それぞれの段階において検討すべき事項を体系的に学びます。

全体講義で理論を学ぶとともに、ディスカッションのグループで世界各国の具体的事例をロールプレイしながら、ケーススタディによって理解を深めていきます。

例えば、ディスカッションでは、
(a)パキスタンにおける政治的混乱について与党党首としてどのように対応するか、
(b)インドにおいて条件付き現金給付を実施する際にどのような制度設計にするか、
(c)キューバの経済政策を立案する上でどの政策を優先的に取り組むか、
など今まであまり考えたことのなかった論点について、各国の様々なバックグラウンドを持つ学生と議論をしています。

また、議論だけでなく、授業で得た知識を使って政策提言のペーパーを書く必要があり、私は日本の少子高齢化社会の現状と対策について政策提言を書いています。

(2)Accounting for International & Public Affairs (Alan Brott 教授)
会計学。こちらはMPA/MIAに共通する必修科目です。貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの基礎知識を確認した上で、企業の財務状況を具体的に分析します。

Brott教授はコロンビア大学のビジネススクールで長年教鞭をとっており、40-50人程度のクラスの規模にもかかわらず、双方向的な授業を展開しており、毎回楽しく話を聞いています。

会計学については、すでに一通り履修済みであったものの、Brott教授のわかりやすい事例やユーモラスな例えによって、より理解が深まっていると感じています。

(3)Decision Models & Management (Lucius Riccio 教授)
意思決定モデルとマネージメント。こちらは副専攻のManegementに関する選択科目です。会計学のBrott教授と同じく、Riccio教授もコロンビア大学のビジネススクールで教鞭を取られておりましたが、現在ではSIPAでこちらの授業を担当されています。

Excelのソルバー機能を使って、費用最小化問題や利潤最大化問題を解くのですが、ビジネススクールの授業とは趣が異なり、社会的コストの最小化や、議会で法律を通すための票読みなど、パブリックスクールに合わせた題材を使用しているのが特徴的です。

この授業の手法を実際の政策立案過程に応用するためには、社会的コストの算出など、Excelにどのような数値をいれるかというのが最も困難な点だと思いますが、一定の仮定をおいた上で最適解を求めるプロセスはとても勉強になります。

また、Riccio教授も非常にユーモラスで、毎回毎回学生の笑いを誘っているので、こちらも飽きずに授業を聞けています。

(4)International Finance and Monetary Policy (Richard Clarida 教授)
国際金融と金融政策。こちらは主専攻のIFEPに関する必修科目です。Clarida教授はコロンビア大学の経済学部の教授を兼務されております。国際マクロ経済学の理論(AA-DDモデル、金利平価説、テイラールールなど)をグラフやチャートを示しながら概括するとともに、理論だけでなく日々の時事トピックも扱っています。

例えば、日銀やFed、ECBの政策決定会合がある際には、それらの政策についてレビューと解説をしてくれるのですが、日銀の政策についても非常に正統的な理解をされており、その理解の正確さに驚かされました。また、ドイツの銀行の破綻が懸念されたニュースが市場を駆け巡った際も、丁寧に解説をしてくれました。

会計学やマネージメントと違って、話が非常に単調なのでその点は集中力を保つのが大変ですが、話の中身はとても知的好奇心が刺激されます。

(5)English for International and Public Affairs (Brittany Ober 講師)
英語のライティングの授業。こちらは選択科目であり、英語のライティングを集中的に学び、アカデミックレベルで耐えられるような英語力を身につけることが目標です。

講師のBrittanyは、コロンビア大学のAmerican Language Programという英語教育を専門とした教育機関の講師で、いつも明るく丁寧に指導してくれるので、とても実用的で勉強になる授業です。

冠詞の使い分けや、ロジカルな文章のつなげ方などのレクチャーを受けるとともに、自分の興味関心のある分野について、エッセイを執筆して添削を受けることができます。

※これらの授業の他に、違う分野にも関心がある方は、Course Searchに興味のある単語(Development, Environment, Tax)を入れてみるとSIPAのコースを検索することが可能ですのでお試しください。

4.おわりに
総じて見るとSIPAの特徴は、下記のような点だと感じています。

・多様な学生のバックグラウンド
→全世界から1学年400〜600人もの人数。

・授業選択の幅広さ
→経済学部やビジネススクールなどの授業も受講可能。他学部の教授がSIPAの授業を受け持つことも多々。

・間口の広さ
→経済学などの履修経験がなくても基礎から学習可能

・パーティーが多いので友達が作りやすい
→参加しない自由も

・ニューヨークの利便性
→ビジネス界や学界の集合場所

・心の拠り所としての日本人コミュニティ
→留学で多くを学ぶために、日本人同士でなるべく固まらないようにしていますが、体調を崩したときなど先輩や友人はとても頼りになります

公務員の方だけでなく、民間企業の方にとっても魅力的なカリキュラムが整っていると思いますので、ぜひ志望先の候補にいれてみてください。出願準備や職務に大変な日々が続くと思いますが、日増しに肌寒くなる季節ですので、体調にはくれぐれもお気をつけください。

追記:カリキュラムについてはこちらの先輩方の記事も合わせてご参照ください。
2015年秋学期の模様
SIPA生活1年目を振り返る

【2016年入学式:SIPA as “a place where the world connects”】


Copyright: Columbia SIPA

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